ー地域のミライー靴下の町・加古川から世界へUNIVALが描く地域産業の未来
三建は、「2050 STANDARD HOUSE」を指針に、環境性能と暮らしの質を兼ね備えた高性能住宅の提供を目指し、加古川を中心に播磨地域で家づくりに取り組んでいます。
2050年という未来を見据えながら、地域の気候や風土に根ざした住まいの在り方を探求し、持続可能で豊かな暮らしをこの地に広げていくことが私たちの使命です。
本コラムでは、そんな私たちが日々の活動の中で出会う、地域に根ざしながらも未来を見据え、挑戦を続けるさまざまな業界や企業の取り組みにスポットを当て、播磨の地で育まれる新しい価値や可能性を、皆さまにご紹介していきます。
受け継がれるもの、変わっていくもの

播磨の地、加古川。
この地域には、かつて数多くの靴下製造工場が立ち並び、「靴下の町」として知られていた時代があった。多くの工場は、大手スポーツメーカーなどからのOEM(受託製造)を担い、確かな品質と技術で日本の足元を支えてきた。
しかし時代の流れとともに、安価な海外製品の台頭、国内需要の変化により、その灯火は徐々に小さくなっていった。
そんな中、ひとつの会社が新たな挑戦を始めた。加古川に本社を構えるUNIVAL(ユニバル)。
元は他の多くの工場と同じくOEMを中心に製造を行っていた企業である。だが、社長はこのままでは地元産業が衰退してしまうという危機感を強く抱いていた。
「このままOEMだけでは、いつか技術も、誇りも、すべてが失われてしまう。」
その想いが、やがて自社ブランド開発という決断につながっていく。
“IDATEN”誕生
職人たちの情熱が形になった瞬間
UNIVALが立ち上げた最初の自社ブランド、それが高機能スポーツソックス「IDATEN(イダテン)」その名に込められたのは、「速く、軽やかに、強く走り抜ける」そんなアスリートの理想像。そして、その理想を実現すべく、開発には数年の歳月が費やされた。


OEM時代に培ったノウハウ、職人たちの手技、そして現場の声。
それらを一つに束ね、何度も試作と改良を重ねた末に完成したのが、独自開発の「ハチの巣構造」を取り入れたIDATENソックスである。
六角形の集合体からなるこの構造は、足への圧力を効率的に分散させ、抜群のフィット感とサポート力を実現した。この技術は、1年半という時間をかけ、正式に特許も取得。製品だけでなく、技術そのものにも価値があるという証明となった。
ひとつの目標に向かって、全員が同じ方向を向いて走り続けてきた。その成果が認められた瞬間だった。
社員の力が生み出す次なる一歩
IDATENの成功を皮切りに、UNIVALの挑戦はさらに加速する。
2024年5月、本社工場の隣にあった古民家を改装し、直営のショップをオープン。製品の背景にある“物語”を、より多くの人に直接届けるための空間。


さらに、社内では女性社員たちが中心となって、新たなブランド「Maison Peony」や「ECRU FOSSETTE」の企画・開発が進んでいる。
これらは主に女性向けの着圧ソックスで、冷えやむくみといった日常の悩みに寄り添う商品。
企画会議では「こんなソックスが欲しい」といった日々の声が交わされ、職人たちがその声をかたちにしていく―それがUNIVALのスタイルである。
すべての社員が、発案者であり、開発者であり、作り手となる。その一体感が、UNIVALというブランドに確かな厚みと温かさをもたらしている。
地域から、未来へ
思いを履いて、走り出す

「100円でも靴下は買える時代。でも、1000円、2000円の靴下を履くことで、その違いを実感してほしい。疲れにくくなるし、足に合った靴下の心地よさを知ってもらいたい。」
そう語る社長の笑顔には、地域産業への誇りと、未来への希望がにじむ。IDATENは今、大学の陸上部や社会人アスリートの足元を支え、実際のフィードバックをもとに日々進化を続けている。
UNIVALの歩みは、決して派手ではない。
だがその一歩一歩には、地域を想う心と、モノづくりへの熱が確かに宿っている。播磨の地から始まったその挑戦が、やがて世界の足元を変えるかもしれない。
これは、ひとつの町工場が描く、希望の物語。地域の過去と未来をつなぐ靴下が、今、静かに、力強く走り出している。



ユニバルHP :https://www.unival.co.jp/
Instagram :https://www.instagram.com/idatensports/